第124回

2013年1月1日 菱川貞義

勇気011 進む勇気と、戻る勇気

 進む勇気と、戻る勇気。あるいは動く勇気と、動かない勇気。

 登山中に続行が困難な状況に陥った時には、さらに上に登る決断よりも、山を降りる決断のほうが実は登山家には勇気が要る。ということがいわれたりする。しかしこの2つの勇気は、現代社会のさまざまな局面で試されている。しかもそのどれもが人類の存亡を決してしまうぐらいの重要度で。

 いくら地球温暖化防止という目的のためとはいえ、いくら教育や医療やほかの課題のためとはいえ、いくら劇的な成果が期待できるとしても、人類にとって取り返しのつかないリスクの可能性がある場合、果たしてそのリスクを無視して進んでもいいのだろうか。

 ここで「戻る勇気」とは別に、もうひとつ重要な問題がある。いま人類が歩んでいる道にはとても奇妙な道がたくさんある。その道は、いったん前に進むと、後ろに戻る道が即座に消えてしまうのだ。

 自分たち人類という種をかんたんに絶滅させる知恵を身に付けたヒトは、進む前に、いつでも戻れる道を用意しなければならない。やみくもに「大丈夫」といって進めて、いざ人類絶滅のリスクが現実のものになった時、だれかが謝ったり、だれに責任があるのかを追求したりしても事は収まらない。問題は人類滅亡の危機を回避できるかどうか、後ろに戻れる道があるのかどうか、なのである。

 いま人類はとても危うい状況下にあるのだが、しかし、われわれは明るく進んでいける道をつくることもできる。 思う存分に進んでいくことができる社会。いつだって懸命に開発できる社会。 実は275研究所はこのような道づくりも行なっている。


 

(つづく)

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